たった一度のモテ期なら。
デートだって、思ってもいい?

さっきまでのやり取りを読み直して、何かを読み取ろうとしてみる。

『明日いいことありそう』って言うのを私と会うことだって思うのはこじつけすぎるよね。

上書きって言ってたのは、なんで?忘れてないよってことなのか、ごまかして流したってことなのか、それすら私には読みきれなくて。

明日、何着て行こう。

そう思いながら、ようやくやってきた眠気に襲われた。




初夏に近いカラッと明るい陽気の中、スーツじゃない西山を久しぶりに見た。着こなしなのか、なんとなく目立つからすぐに見つかる。

自然体、自然体。呪文のように唱えてから駆け寄った。

「私服で会うの懐かしい感じがする。新人の頃は土曜日とかもみんなで遊んだことあったよね」

「そういう感想か。まあいいけど。じゃあ久しぶりに行くか、カラオケ」

「大丈夫なの?」

「なるべく狭くてボロそうなところ探そう」

楽しげに自分から言うから、本気を疑いながらも路地裏で探してみる。

軽く歩き回ると雑居ビルの2階の本当に古そうなカラオケボックスが見つかって、窓のない狭い部屋に通された。

そう、こういう感じになるとなんだかんだと言っては途中で出て行ったのを覚えている。

「どう?」

「まあ、平気。そっちは?」

「私も別に普通だよ」

実際西山は普通に楽しそうで、私も2人きりだということにどこか緊張してた気分は久しぶりに歌った1時間で吹き飛んでいった。
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