たった一度のモテ期なら。
お手洗いに行ってから席に戻ると、読んでいたパンフレットを隣からぽいっと投げてきた。

「気に入ったのは買い集めてるとか言ってたよな、前に」

「うん、ありがとう。破産しない?」

「ぎりぎり大丈夫」

ふざけて言い合いながら、でも本当は後に残るものはちょっと嫌なんだけどと思っていた。家に帰ってから1人で見たら、どんな気持ちになるんだろう。

「嫌われたり怖がられたりしてるんだろうと思ってたんだけどさ、そういうことじゃないって思っていい?」

「うん。そんなんじゃない」

映画が始まる直前にぼそぼそと交わした会話は、やっぱり西山なりの罪滅ぼしなのかなという思いを強くさせて、それ以上何か言われる前に「しーっ」と指を立てた。

子供達が大人と渡り合って戦う感動ストーリーでは、遠慮せずぼろぼろと涙をこぼした。

歌ったり笑ったり泣いたり。
大丈夫、とにかく今日はとことん楽しもう。

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