【完】俺がずっと、そばにいる。
りっくんが急にこちらを振り返って、私の目をじっと見る。
「元カレはもういないわけだけどさ、ゆずとか、関わった人たちの記憶の中では生きてるわけじゃん。覚えてる人がいるから、その存在が生き続けられるんじゃないかと俺は思うよ」
「りっくん……」
なにそれ。でも、言われてみればそのとおりだ。
私、そんなふうに考えたことなかったかもしれない。
「だからべつに思い出とかそういうのは、忘れようとか思わなくてもいいし、乗り越えようとか焦らなくてもいいよ」
「……そっか。そうだよね」
「俺がその元カレだったら、お前にはなるべく笑っていてほしいって思うけどな。天国から見てるかもしんねぇぞ。『あ、また泣いてる』って」
りっくんにそう言われて、思わずまた目に涙がにじんでくる。
同時に、涼ちゃんに昔言われた言葉を思い出した。
『俺、柚月の笑った顔が好き』
そうだ。涼ちゃんはいつもそう言ってくれてたんだ。
なのに私は泣いてばっかりで……ダメだよね。