【完】俺がずっと、そばにいる。
「たまには、恋人っぽいことしてみようかと思って」
俺がイタズラっぽく口にすると、ゆずは戸惑った顔のままこちらを見上げる。
「恋人って、ここ、学校じゃないのに?」
「うん。ダメ?」
「えっ。いや、ダメっていうか……」
なに赤くなってんだよ。こっちが照れるだろ。
恥ずかしい空気に耐えられなくなった俺は、ゆずの頭を右手でくしゃくしゃとかき乱した。
「バーカ」
「ひゃあっ、ちょっと!」
でもたぶん、俺のほうがさっきから何倍もドキドキしてる。
いつかゆずも、同じくらい俺にドキドキすればいいのに。
俺のことで頭いっぱいになればいいのに。
でも、今はただこうして一緒にいられる時間が幸せだから、このままでいいかって思ったりもする。
届かない想いかもしれないとは知りつつも、やっぱり俺はゆずが好きだから。
だから今日も俺は、彼女の隣にいる。
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