【完】俺がずっと、そばにいる。
ふいにじーっと顔を覗き込んでくる彼。
私のテンションが低いの、わかるんだ。
「そ、そんなことないよっ」
とっさに否定してみたけれど、彼はそんな私を慰めようとでも思ったのか、頭をヨシヨシと撫でてきた。
「そっかそっか。そんな時もあるよね」
「え、あの……」
「それじゃあ俺と、夜の散歩でもする?」
そう言うと、すかさず私の手を取って繋ごうとしてくる咲夜くん。
これはまずい。完全にまた彼のペースだ。
「だ、大丈夫!私もう、戻るから!」
私は慌てて手を振り払い、ホテルのほうへ引き返そうと振り返った。
だけど、咲夜くんはすぐにまたパシンと腕を捕まえてくる。
「ダメだよ。そんな顔してる柚月のこと、俺ほっとけないし」
「でも私、行かないっ」
「そんなこと言わずにさぁ。歩いたら、気持ちも晴れるかもしれないよ?」