【完】俺がずっと、そばにいる。

中でも特に気になったのは、柔らかいと噂のナマコ。


ニセクロナマコという名前のそのナマコは、真っ黒で、毛が生えたみたいにもじゃもじゃで、一見大きな毛虫か何かのようだった。


なんだかとても可愛らしい。


少しドキドキしながらも思いきって軽く掴んでみる。


「うわぁ~っ!」


そしたらそれは思っていた以上に柔らかくて、何とも言えないやみつきになりそうな感触だった。


「なにこれ!なんかふわふわっていうか、もにょもにょしてる!柔らかい!」


私が大興奮していたら、その隣でりっくんはなぜかすごく渋い顔をしてる。


「ねぇ、りっくんも触ってみなよ!ふわふわで気持ちいいよ」


声を掛けたら、彼はますます怪訝そうに眉をひそめた。


「いや……俺はいいわ」


まるで、何かグロテスクなものでも見るような目でナマコを見ている。


「えっ、なんで?こんなに可愛いのに」


「これのどこが可愛いんだよ!」


「可愛いじゃん!あ、もしかしてりっくん、触るのが怖いとか?」


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