【完】俺がずっと、そばにいる。

なんて冗談ぽく聞いてみたら、りっくんは一瞬ドキッとした顔で目を見開いた後、すぐにパッと目をそらす。


「……っ、なわけ、ねぇだろ」


それを見て、やっぱり苦手なんだなと確信した。


意外だなぁ。りっくんがこういうの苦手だなんて。パッと見全然平気そうに見えるのに。


「ふふ。まぁ、別に無理して触らなくてもいいけどね」


だけど、私がそんなふうに口にしたら、悔しかったのか彼は少しムッとした顔になって。


「べ、べつに……触れるよ。俺だって」


そう言いながらおそるおそる片手を水槽に近づけると、次の瞬間ツン、と指一本だけナマコに触れてみせた。


触った瞬間、その感触にビックリしたのか、目を見開きキョトンとした顔になるりっくん。


「あ、柔らかい……」


その様子はまるで、生まれて初めて動物を触った子供みたいで、あまりの微笑ましさに笑ってしまった。


「……ぷっ。あははっ!」


「おい。なに笑ってんだよ」


「だって、りっくんナマコにビビりすぎなんだもん」


「ビビってねぇだろ!」


< 206 / 376 >

この作品をシェア

pagetop