【完】俺がずっと、そばにいる。
なんて冗談ぽく聞いてみたら、りっくんは一瞬ドキッとした顔で目を見開いた後、すぐにパッと目をそらす。
「……っ、なわけ、ねぇだろ」
それを見て、やっぱり苦手なんだなと確信した。
意外だなぁ。りっくんがこういうの苦手だなんて。パッと見全然平気そうに見えるのに。
「ふふ。まぁ、別に無理して触らなくてもいいけどね」
だけど、私がそんなふうに口にしたら、悔しかったのか彼は少しムッとした顔になって。
「べ、べつに……触れるよ。俺だって」
そう言いながらおそるおそる片手を水槽に近づけると、次の瞬間ツン、と指一本だけナマコに触れてみせた。
触った瞬間、その感触にビックリしたのか、目を見開きキョトンとした顔になるりっくん。
「あ、柔らかい……」
その様子はまるで、生まれて初めて動物を触った子供みたいで、あまりの微笑ましさに笑ってしまった。
「……ぷっ。あははっ!」
「おい。なに笑ってんだよ」
「だって、りっくんナマコにビビりすぎなんだもん」
「ビビってねぇだろ!」