【完】俺がずっと、そばにいる。
と思って琴子のほうを見たら、なぜか同じように立ち止まり、教室を覗いている。
そして、人差し指を口の前に立てると、私に向かって「シッ!」なんて小声で口にしたりして。
私以上に一生懸命聞き耳を立てる彼女の姿に驚いた。
これは、琴子も会話が気になるってことなのかな?
「そうなの。昨日ね、帰り歩いてたら急に雪が降ってきちゃってさ、そしたら梨月くんが傘さして歩いてるのを偶然見つけたから、入れてもらったの~」
「え~っ!なにそれ、相合傘じゃん!すごーい」
「ふふっ。ちょうど二人ともバイトに行く途中だったからね。ラッキーだった。しかもね、梨月くんたら、私が自転車にぶつかりそうになったところをとっさにかばって助けてくれたんだよー。優しくない?」
かばって助けたって……まさに昨日自分が目にしたあの瞬間だ。