記憶を失くした総長

その静かな空間を壊したのはひとつの電話だった。
鳴り響いてすぐに看護師が受話器を取り音はやんだが、看護師は慌てている様子だ。

__医院長に連絡を!
別の看護師が隣の電話で医院長に連絡をしているのだろう。
それから2分ほどした時に遠くから走ってくる音が院内に響く。

「__状況を教えて。」

声の主はこの病院の理事長である『二条昴』さんであった。
以前、紗音さんが大和のことを紹介していた時に雷華の俺たちとも軽く挨拶を交わしている。
そして再び電話が鳴り響く。

昴「もしもし。

__何分で抜けられそう?

__わかった、容態は?」

電話をしながら看護師に指示を出し続け、人が集まると共に医療用具も揃えられていった。
___移動式ベッドに点滴、酸素マスク、血圧計、毛布…名前が分からないものも多い。
かなりの重症者なのだろう、7、8人の看護師や医師がこの場に集まっていた。

雅「あれ?2人はどうしたんですか?」

こちらを覗き込む雅。

成「…電話は終わったの?」

そう告げると一瞬だけ顔を顰めたがすぐにいつもの笑顔で返事をした。

成「俺が気持ち悪くなっちゃって、大和が連れ出してくれたんだ。」
雅「…まだ終わってないんですね。私はそっちに行ってきます。成輝はもう少し休んでいてください。」

最後に大丈夫ですか?と一言告げたのに頷いて返し、それを確認した雅は処置室の方に向かっていった。

成輝sideend
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