記憶を失くした総長

気づくまでには時間がかかる

雅side

あの後レポートを書き終えたのは日付が変わった頃。
3人が帰ったあとに家のものを呼んで必要なものを用意してもらった。
レポートを書いている途中、紗音さんによる手作りの夕食(鶏肉のパスタ・ミネストローネ・シーザーサラダなど)を頂いたが、バランスもよく、とても美味しかった。

そしてそのお盆の上には『私のご飯と同じで悪かったな。』とメモが。

感謝を伝えようと看護師に居場所を聞いたが、今はこの階に居ないらしい。
今度会った時に礼を言おうと決めた。
そして今はシャワーを浴び、用意してもらった綺麗な服に着替えた所だ。
病室に戻ると相変わらず、静かに瑞希は眠っていた。
先程桜哉が座っていた場所に腰を下ろす。
瑞希の髪を1束すくい上げキスを落とした。
ベッドを用意すると言われても、近くで寝たいから必要ないと言った。
4月の初めとはいえ夕方から朝にかけてはまだまだ寒いので毛布だけ貸してもらった。
横のパソコンのディスプレイを見ると時刻は1時半。
瑞希の指に手を重ねる。

「…おやすみ。私の最愛なる人。」

目覚めた時、1番に君の瞳に映りたい。

ただそれだけを願って、眠りについた。

雅sideend
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