記憶を失くした総長
病室に着いて何故か背後でジャンケンをしている4人にデジャヴを感じつつ、また勝ったと喜ぶ大輝に車椅子からベッドに移動されてもらった。
時刻は19時過ぎ。
今日は起きてからずっとみんなに迷惑をかけっぱなしだったので早めに帰るように言った。
部屋の中に点滴の雫が落ちる音、呼吸器、心電図の音が響く。
ものがちゃんと口に出来なくなって2ヶ月は経った。
そしてレモンティーと栄養剤、点滴だけになって1ヶ月。
『…意外と生きられるんだね。』
これだけで。
脂肪が落ち、筋肉も落ち始めているのは分かっているがまだ実感は湧かない。
「もう二度と無茶はするな。」
目が覚めてしばらくした頃に航に言われた言葉。
何をしたか、皆教えてくれなかった。
怒りもせず、隠し事はするなと悲しまれた。
過去の私は何を隠していたのか、今の私にはわからない。
『今の私なら、みんなを悲しませたりはしないよ。』
その言葉を1人、病室で吐きだした。
麗華sideend