記憶を失くした総長

入ってすぐ病院内に16時を知らせる放送が流れる。
そして放送が終わったかと思うとずっと流れていたのであろうピアノの曲が再開する。

__麗華がよく弾いていたこの曲は彼女の好きなショパンの曲。
曲名を思い出そうとしたが全く浮かんでくる気配がなかった。
色々と考えているうちにも時間は過ぎていってしまう。
入口で突っ立って曲名を思い出す訳でもないので閉じた傘を傘袋に入れ受付に向かった。
慎「すみません、23階のカードキーを頂けますか?」
「えっと、……入院されている方のご家族ですか?」
慎「…?いえ、違いますが。」

前回来た時に母にカードキーを貸したら返して貰えず今日必要だと言ったら受付に渡しておくから声をかけろとの事だ。

「本病院23階、病棟への一般の方の出入りは禁じられております。入ることは出来ません。(何このイケメン!困った顔もちょーカッコイイんですけど!!良ければお近付きにっ!)」

なるほど、受付の人はここに配属されたばかりなのか。
それにすべての責任は母にあるし、俺も俺でよく病院には遊びに来ていたので顔見知りばかりだと思っていた。
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