記憶を失くした総長

丁寧に、ゆっくりと包帯を目を隠すように巻いていく。
もちろん一度俺が巻き直したものをだ。

慎「終わったよ。キツくない?」
『…おぉ!すごい!さっきまでと同じ感じ!慎都は手先が器用なんだね…私なんか巻くのすらぐっちゃぐちゃになっちゃって。』

___過去、その不器用さが特に目立っていたのが繁華街で不良を救った時だったか。
雄太が持っていた救急セットを受け取ると小型の冷却スプレーで冷やすところまではよかったのだが、圧迫するための包帯が大変やばかった。
処置の仕方を勉強していたし、練習もしていたが包帯だけは上手くなることがなかったな。

麗「…慎都はなんでも出来そうだね。」

そんなことない、麗華にかなうものか。
麗華を車椅子に乗せ、先程のブランケットを膝にかけた時、麗華が言った。

『お礼をするからなんでも言って。』



何でもと言われて思い出してという言葉が浮かんだがそれは今じゃない。

だから考えた末、出たのは。

慎「1曲、弾いてくれる?」

・・・いやいや、待て。
俺がさっき包帯巻いたばかりじゃないか、何言ってる俺。

慎「やっぱ今のなs『いいよ。』

……え?

『見なくても弾けるから、何がいい?』

___拝啓、華蝶のみんな。
麗華はまたレベルアップしました。
俺だけ先に聴くことをお許しください…特に夏希。


『慎都はなんの曲が好き?』

慎都sideend
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