記憶を失くした総長

そして____確信した。

私は慎都を、知っていると。

『…慎都。』
慎「ん、」

急に口を開いた私の言葉を聞こうとしてくれているのが分かる。

『…待っててくれてありがとう。

もう少しだけ、待てる?』

その先の言葉は言えなかった。
ゆっくりと離れた慎都は私の頭に手を置く。

慎「…これだけは覚えておいて。」

___俺は麗華の味方だから。

慎「じゃあまた、会いに来るよ。」

そう告げると慎都は私のそばを離れていった。
私はピアノに向き直る。

『……あぁ、悔しいなぁ。』


私よりも、私が忘れてしまった人達の方が苦しんでいるというのに。



____全てを忘れてまで

私は何から逃げてしまったのだろう。

麗華sideend
< 172 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop