寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「下に車を待たせているから、支度をしたらすぐに下りてくるように」
風見さんはそう言い置くと、さっさと社長室を出て行ってしまった。
そう指示されて動かないわけにもいかない。
呆然としていた私はすぐに自分を取り戻し、慌てて支度を整えて階下へと向かった。
風見さんの社用車はさっき同様に真ん前に付けられていて、私が近づくと同時に寺内さんが下りて後部座席のドアを開けてくれた。
先に乗っていた風見さんは手を差し出して私を引き入れ、私を隣へと座らせた。
デパートの帰りにされたキスを思い出して、ひとりドキドキと胸を張り詰めさせる。
ところがそれは私ばかりで、なにごともなく美容院へと到着。
予約までされていたらしく、すんなりと鏡の前へと案内された。
「彼女のカラーリングとカットを頼みたい」
「どういった感じにしましょうか」
「重たい印象があるから軽くするのと、彼女にはフェミニンなほうが合うから優しい感じに」
私のことを置き去りに、風見さんとスタイリストが話をまとめていく。
それを鏡越しに眺めているうちにどんどん私のヘアスタイルが変わっていった。