寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
数時間後、鏡に映った自分に唖然とする。
アッシュ系ピンクのやわらかなカラーになった髪は、レイヤーを入れて毛先に軽くカールが施され、まるでどこかの令嬢風だ。
今までの私とは全くの別人になってしまった。
ふと鏡に風見さんが映り込む。
「想像以上の仕上がりだ」
風見さんにじっと見つめられ頬が熱くなる。
「仕事中はサイドだけまとめれば大丈夫だろう」
そう言いながら風見さんが私の髪に触れ、サイドの髪をうしろへまとめる振りをする。
彼に髪に触れられただけでドキッとしてしまった。
「茜はひとつにきっちりとまとめるよりは、こうしたやわらかい印象のほうが合ってる」
「……あ、りがとう、ございます」
たどたどしくお礼を言うと、風見さんがふわりと笑う。
朝出勤したときとは別人になってしまったかのような自分に、心が密かに浮足立った。