寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

田丸さんに唐突に聞かれて「はい……?」と返す。


「親睦の意味も兼ねてご飯でもどうかなと思って。本当は昨日誘おうと思って、あのあとすぐに社長室へ行ったんだけど、もう帰ったあとだったから」

「そうだったんですね。すみませんでした」

「ううん、私も一緒にいたときに言えばよかったんだけど」


真っ先に浮かんだのは風見さんのことだった。夕食の準備が気になったのだ。
私がマンションに置いてもらえているのは、まず第一に食事の準備があるからこそ。
“お試しの恋人”はあとづけだから。

ただ、せっかく気にかけてくれた田丸さんに断るのは気が引けてしまう。


「社長に夕方のスケジュールを確認してからお返事してもいいでしょうか?」

「そうね、外出の予定が入っていたら無理だものね。それじゃ、またあとでね」


田丸さんはそう言って手をひらりと振り、副社長室へと入って行った。
私も社長室へ戻ると、奥の部屋では風見さんが真顔で書類に目を通しているところだった。

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