寵愛命令～強引社長はウブな秘書を所望する～

「恋人だからといって行動を制限したりするような野暮なことはしない。せっかくの誘いだ。遠慮せずに行って来い」


風見さんはそう言いながら財布を出し、そこから一万円札を取り出した。


「これでふたりで食べてくるといい」

「――いえいえ！　とんでもないです！」


一歩後退し、両手を体の前で振る。


「いいから持って行け」


風見さんは立ち上がり、私の手をむんずと掴んで万券を握らせた。

なにからなにまで面倒をみてもらっている上、外食の費用まで持ってもらうわけにはいかないと何度も拒否したものの、結局最後にはポケットにしまわされてしまった。