寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

そのことを話すと、田丸さんが「仕事ができそうに見えるように澄ましているだけよ」と笑う。


「同じ秘書課だし、これから仲よくしていきたいから茜って呼んでもいいかしら?」

「もちろんです」

「私のことも沙智って呼んでね」

「はい、沙智さんと呼ばせていただきます」


笑い合いながら、もう一度乾杯をした。


「茜、彼氏は?」


突然の質問に、口に入れたばかりの生ハムをごくりと丸飲みする。
その上からグリーンフィズを流し込み、質問の驚きと一緒に胃へと押し込んだ。

風見さんの顔が浮かんだけれど、彼は期限のある恋人。しかもお試しでは人に話せるような相手ではない。
その上それが社長だなんて、とてもじゃないけれど告白できない。


「なんだか気になる反応ね」

「いえっ、違うんです、本当に。彼氏は何年もずっといません」

< 108 / 318 >

この作品をシェア

pagetop