寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

風見さんのことは置いておき、一応、彼氏と呼べる存在がいたことはある。
大学四年生のときに同じサークルにいた同級生だった。
周りの仲間から『付き合ってみれば?』と言われ、なんとなく流されるような形で約一年間交際。就職先の旅行会社が倒産した私と、順風満帆なフレッシュマン生活を送る彼との間に溝ができてから別れるのはあっという間だった。


「そういう沙智さんは?」


美人で聡明だし、私のことを気にかけてくれたりして性格もよさそう。

ところが沙智さんは寂しそうな表情で首を横に振った。


「彼氏いない歴二十八年」

「――本当ですか?」


信じられなかった。
こんなに素敵な沙智さんに、生まれてこのかた彼氏がいないだなんて。
世の中の男の人たちは、ちゃんと目が見えているのかな。


「全然モテないの」


信じられない言葉の連続だった。
沙智さんがモテなかったら、いったい誰がモテるというのか。

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