寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

でも、沙智さんに彼氏がいない理由と、私がモテない理由は明らかに違うだろう。
美人で気だてのいい彼女は、とっくに誰かのモノになっていると思われがちなんじゃないか。

今は風見さんのおかげで、少しは地味で冴えない私から脱皮できたとは思うけれど、そんな私とはわけが違うと思う。


「ところで仕事はどう?」

「がんばろうっていう意気込みはあります……」


それが空回りにならないように気をつけないと。
風見さんに片づけを褒められたからといって、有頂天にならないようにしなくては。

私が答えると、沙智さんはふふっと笑った。


「この半年で秘書をふたりもクビにしているけど、暴君ってわけじゃないから心配しないでね。それにクビとは言っても、会社を辞めさせたわけじゃなく部署異動だから」

「はい」


初めてその話を聞いたときは驚いたけれど、それも風見さんなりの理由があってのこと。
社長と秘書は阿吽の呼吸みたいなものが必要だろうから、私も風見さんの痒いところに手が届くような存在になれたらいいのだけど……。

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