寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

沙智さんが副社長から聞いたところによると、あとから家族になった風見さんはどことなく孤立していて、大学卒業後は逃げるようにアメリカへ渡ったそうだ。
副社長の母親としては、亡くなった先代の社長の後を継いで、自分の息子である副社長を社長にしたいと考えていたらしいが、副社長から辞退したとのことだった。

なにごとも順風満帆に思えた風見さんに、そんな過去があるとは思いもしなかった。


「秘書に飲み代をくれるくらい太っ腹な社長は、私の中でのポイントもかなり上がっちゃったわ」


本当にそうだと思う。
バイタリティに溢れてフットワークが軽く、仕事はもちろんのこと女性を持ち上げるのもうまい。
そんな人の恋人になったことは、未だに信じられない部分があった。

それから私たちは二時間ほどその店でおしゃべりを楽しみ、素敵なOLデビューの夜は更けていった。

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