寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「ほら、おいで」
「きゃっ」
風見さんが私の両手を掴んで強引にプールに引き込む。
水面が私の鎖骨あたり。思いのほか深くて、つい爪先立ちになり風見さんの腕にしがみつく。
「大丈夫か?」
「もっと浅いかと思っていました」
あとになって腕の逞しさに気づいて慌てて手を離すと、視界の隅で風見さんが軽く笑うのが見えた。
「よし、競争するか」
「――競争ですか?」
風見さんがいたずらっぽい目をする。
「そんなの絶対私が負けます」
「物事に絶対ということはない。ほら、いくぞ。よし、敗者は勝者の言うことをひとつ聞くことにしよう」
「え? あ、ちょっと待ってください!」