寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
強いられた緊張に張り詰める鼓動。
「……そんなの無理です」
私が懸命に首を横に振ると、風見さんは「どうして?」と眉間に軽く皺を寄せた。
「だって……恥ずかしいです……」
「恋人にキスをすることのどこが恥ずかしいんだ」
風見さんからされるのならまだしも、自分から仕掛けるなんて難易度が高すぎる。
「勝者は誰だ?」
からかうように言いながらも、その目にどこか獲物を捕らえるような色が見えて体が強張る。
「……風見さん、です」
「それじゃ、やってみようか」
風見さんは自分の唇を指差した。
言い出したら絶対に譲ることのないのが風見さんだ。
きっとこのままでいたら、朝までだってプールに浸かりっぱなし。彼の言うとおりにする以外にないのはわかっていた。