寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
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「本日は、午前九時半に【鏑木物産】の社長様がお越しになり、午後二時は【ユニオンミーニング】の専務様とのお約束がございます」
朝一番の予定の確認は毎日の定例業務のひとつ。
コーヒーを出したあとの社長室で、予定表を確認しながら風見さんへ報告する。
両社とも貿易関係の商社だ。
「昨夜の【木崎亭】だが、先方から好評だったぞ」
風見さんはデスクに両肘を突いて私を微笑みながら見上げた。
「それはよかったです」
昨日は、夕方お越しになっていたお客様と風見さんが、急きょ夕食を一緒にすることになったのだ。
会食で利用するのに適したお店のリストを沙智さんからいただいて、その中からめぼしいところをピックアップし、急だったがなんとか予約をさせてもらえた。
そのリストは和食からフレンチ、中華などあらゆる店を網羅していて、沙智さん独自のランキングもつけてある。
「あの会長がうなぎ好きだって知っていたのか?」