寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

そうして首を横に振っていると、風見さんは小さなため息を吐いて立ち上がった。


「ちょっとおいで」


腕を掴まれ、社長室の手前側の部屋にある姿見の前へと連れて行かれた。
その前に立たされ、風見さんはうしろから私の肩に手をのせる。


「いいか、茜、自分の姿をよく見てみるんだ」


風見さんにそう言われ、鏡に映る自分を見る。
今日はAラインの膝丈スカートが女性らしさを演出する、とろみ素材のダークグレーのツーピースに薄いピンクのインナーを合わせていた。メイクはやわらかい印象を心掛け、髪は風見さんに言われたようにハーフアップにしている。


「二週間前と比べて、茜は自分のことをどう思う?」

「……風見さんのおかげで地味で冴えない容姿から少しは――」

「“少し”? 本当にそう思ってる?」


鏡の中で風見さんの目が私を射る。
謙遜して言ったことは確かだった。

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