寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

なにも答えられずにいる私の前で、風見さんの視線が鋭くも甘いものに変わっていく。
私の心臓は、その眼差しに否応なしに反応した。

今朝、社長室で寸止めにされたキスをほしいと思う自分が、ひどく破廉恥に思えてくる。しかも心の通じ合っていない相手だ。
それを受け入れようと自分から顎をほんの少し上向きにしながら、心ではブレーキをかける。


「風見さん、私そろそろ夕食の――」


裏腹なセリフでカウンターに置いた荷物に伸ばした手は、容易く風見さんに掴まれ引き寄せられた。


「夕食はあとでいい」


そう言うなり、風見さんの唇が私の唇を塞ぐ。腰を強く引き寄せられて後ろ髪をかき上げられると、背筋に電流が走ったようだった。

密かに待ちわびていたせいで、風見さんの舌を受け入れようとして簡単に唇も開いてしまう。
奥に引っ込めていた私の舌を探り当てると、彼が執拗に舌を絡めてきた。それは、これまでにない荒々しいキスだった。

酸素をうまく取り込めなくて、わずかな隙間から吐息が漏れる。

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