寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

それでも必死になってキスに応じているうちに風見さんの唇がふと離れ、彼が私を抱き上げた。


「あ、あのっ……」


戸惑っている私をよそに、風見さんが自分の寝室へと足を進める。
大きなベッドに私を下ろし、上から覆いかぶさった。


「茜は俺のモノだ」


風見さんの視線が熱い。

どうしてそんなことを言うんだろう。
風見さんが恩返しの一環として私を恋人にして、自信をつけさせようとしてくれたのはわかる。
キスもその延長上だと、自分で自分を納得させてきた。
それなのに、にわかに独占力を見せつけられて、頭も心も処理しきれない。

“俺のモノ”という言葉と私たちの関係性がちぐはぐで、それを考えるたびに解決の糸口が絡まって見えなくなる。

どうしてこんなにも胸が締めつけられるように苦しいんだろう。
風見さんに見つめられるたびに、キスをされるたびに、心が少しずつえぐられるような想いがしていた。

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