寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「女性の誕生日を覚えるのは、俺の特技のひとつ」
琢磨さんは自分のこめかみのあたりを人差し指でちょんちょんと突いた。
沙智さんから女性遍歴が激しいと聞いていたので、妙に納得してしまうセリフだった。
きっと誕生日プレゼントをさりげなくして、女性たちを虜にしてきたのだろう。
「今、嫌な男だなとか思ってる?」
琢磨さんが私の顔を覗き込む。
「いえ、そんなことは。……ただ、妙に納得してしまって」
「……納得?」
「琢磨さんのお噂はかねがね伺っていたので」
琢磨さんの片方の眉がピクリと動く。
「なんか嫌な感じだなぁ」
「……申し訳ありません」
琢磨さんは腕を組んで私を横目に軽く睨んだ。
琢磨さんがフレンドリーだからつい軽口を叩いてしまったけれど、副社長を相手にして言い過ぎたのは確かだ。
「まぁいいや。とにかく今夜のことは決定。下に車をつけて待ってるからよろしく」
「え、あ、あのっ……」
引き留めようとした私をスルーし、琢磨さんは軽やかな足取りで副社長室へと入ってしまった。