寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「はい……。それに三十分以上も経っていますから、とっくにお帰りになるか、別の女性を誘われているかと思いました」
「……茜ちゃんの俺に対する評価は、随分とひどいものだな」
「すみません……」
またもや言い過ぎてしまったと、助手席で小さくなる。
「それに女性を待つのは当然だしね」
だからこそモテるのかもしれない。
誕生日をまめに覚え、女性を立てる。
それがあってこその女性遍歴なのかと妙に納得してしまった。
「それで、どこへ行かれるんですか?」
「誕生日のお祝いをしに」
そう言って琢磨さんが私を連れていったのは、高級ホテルのイタリアンだった。
初めて足を踏み入れるところは見るところ全てが眩しくて、もの珍しさからついキョロキョロとしてしまう。おのぼりさん丸出しだ。
そんな私の腰を琢磨さんが引き寄せるものだから、慌てて体を離す。