寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「こういうところでは素直にエスコートされるものだよ」


不機嫌そうな顔で琢磨さんにそう言われたけれど、はいそうですか、と応じることもできない。場所に慣れていなければ、そういった扱いにも慣れていないからだ。

出される料理は、どれも初めて見るものばかり。私が普段作っているものとの違いに驚かずにはいられない。
風見さんもこういったものに馴染んでいるだろうと思うと、自分で作る質素な倹約料理がやけに恥ずかしくなった。


「茜ちゃんにひとつ聞きたいことがあるんだけど」


食後のコーヒーを飲んでいた私は、琢磨さんに視線を合わせた。

テーブルマナーはあやふや。少しでも音を立てようものならば、目立ってしまうほど静かだ。
そんな状況で食べ終えて、やっとここから解放されると思っていたところにきて、琢磨さんの目がなにかを探るように感じて身構える。


「なんでしょうか」


カップをソーサーに戻し、手を膝の上に揃えた。

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