寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

それには同意してしまう。
私が風見さんに連れられて行ったこともやすやすと話してしまうのだから。兄弟とはいえ、それはどうなのかと思う。

私が頷いていると、琢磨さんがおもむろに右手を軽く上げる。
それから少ししてテーブルへ来た店員が手にしていたのは、手のひらサイズのホールケーキだった。ピーチやベリー、イチゴなどがふんだんに使われたフルーツケーキだ。
プレートに“ハッピーバースデー 茜”とチョコレートで書かれている。
ろうそくの代わりに、小さな花火がパチパチと音を立てていた。

思わず「わぁ」と声を上げる。


「初めて嬉しそうな顔を見せてくれたね」


琢磨さんにそう言われ、すぐに表情を引きしめた。


「無理して顔を作らなくてもいいだろう?」

「ダメです。琢磨さんに油断は禁物ですから」

「茜ちゃんの俺に対する評価は随分とひどいものだな」


琢磨さんは自嘲気味に笑った。

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