寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
広大な風景を前にして開放的な気分になった。
そうして目の前に広がる山の景色に見入っていると、いきなり理玖さんが現れたものだから、慌てて胸元を手で隠す。
裸を見られたことがあるとはいえ状況は違うから、そうせずにはいられない。
恥ずかしくて、隣に体を沈めた理玖さんに背を向けた。
「なんでそっちを向くんだ」
「恥ずかしいからです」
体は温まったからいっそのこと出てしまいたいけれど、それでは理玖さんに裸をばっちり見られてしまう。
どうすることもできずに背を向けたままでいると、理玖さんが「おいで」とウエスト付近に腕を回し私を引き寄せた。
背中に理玖さんの厚い胸板を感じて、顔が一気に火照る。
渓谷からの空気でも冷やせないほどに顔が熱い。
「そろそろ出ないと夕食が……」
「ダメだ」
髪をアップした首筋に理玖さんの唇が触れ、ビクンと肩が弾んだ。
「今はこれ以上なにもしないから」
理玖さんがうしろから私を抱きしめる。
彼の胸の鼓動を背中に感じて、そこに神経が集中する。
もしかして、理玖さんの心の中にほんの少しでも私の存在があるのかと勘違いしてしまうほど、彼も速いリズムを打っていた。