寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

理玖さんの指示は聞けないし、どうしたものかと迷っているうちに、私の返事も待たずして彼女は腰を下ろした。
長い足を組んで私をじっと見る。
大きな目に見つめられて、同性なのにドキッとさせられた。


「あなたは誰ですか?」


唐突に聞かれて、「風見の秘書です」と答える。


「私はエイミーです。あなたのお名前は?」

「……私は水城茜です」

「アカネね。どうぞよろしく」

「はい……」


いったいふたりはどういう関係なんだろう。
公然とキスをするくらいなのだから……恋人……?

“お試し”という自分の危うい立場が不安を煽る。
脳裏に焼き付いたさっきのキスシーンが蘇って胸が苦しい。

でも、アメリカではキスも挨拶のうち。
単なる友達の可能性だってあると、自分に都合のいい材料を探し出す。
彼女とふたりきりの空間が息苦しく、手持無沙汰に日本茶を入れて出した。

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