寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
言いかけたところで奥の部屋のドアが開き、理玖さんが出てきた。騒ぎが聞こえたのだろう。
「足立社長、どうされたんですか」
「どうしたもこうしたもないだろう。キミの携帯に何度連絡しても出やしないし、会社にかけても来客中だとか外出中と言われるばかりじゃないか。話にならないから、こうして直接出向いてきたんだよ」
足立社長が鼻息荒くまくし立てる。
いったいなにがあったんだろう。
私はどうすることもできずに、その場でオロオロとしてしまった。
確かに最近、足立社長からの電話を伝えると、『いないと言ってくれ』だとか『来客中だと言ってくれ』と理玖さんから言われることが常だった。
もしかしたら理玖さんのコンサルティングで事業になにか支障が出たとか、そういった苦情の申し立てなのかもしれない。
そう考えると落ち着いていられなくなる。
「足立社長、あちらでお話ししましょう」
理玖さんが奥の部屋へ足立社長を案内した。
お茶を入れようと動いた私に、理玖さんが「お茶はいらない。もうあがっていいよ」とドアを閉める。
ただならぬ空気を感じて足が止まった。
必要ないと言われた以上、お茶を持って中へ入ることはできない。
心配だからここで待っていようかとも思ったが、それもきっとしないほうがいいだろう。
私に聞かせたくないほど極秘の話ということだ。
仕方なくデスクの上を片づけ、社長室をあとにした。