寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

皮肉のつもりはないけれど、理玖さんは少し不満そうだ。

でも、理玖さんと私の生きている世界が違うことは事実。雑誌に掲載されていた足立社長の華やかな家庭と私も、また違う。
三者の中で誰が仲間外れなのかは一目瞭然だった。


「ミヤコが契約を打ち切ると言ってきているそうですね」


思い切って話を切り出した。
箸を止め、理玖さんがじっと私を見る。


「社内はその話でもちきりです」

「……そうか。でも心配することはない」

「理玖さんはいつもそう言いますけど、心配して当然です」


私も小さい存在ながら、当事者のひとりなのだから。
理玖さんは顔を険しくさせ、箸を置いた。


「茜はなにを言いたい?」


テーブルの上でそっと手を組んだ理玖さんの視線が真っ直ぐに注がれる。
それがあまりにも強い眼差しで、言葉が喉のずっと奥に張り付いてしまった。

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