寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
でもここであっさりと引けない。
理玖さんには守るべき従業員が何百人といるのだから、責任の比重が全然違う。
すぐに倒産という事態にはならないと琢磨さんは言っていたけれど、それは私を安心させるために言った可能性があるから。
仕事を失うことの辛さを私はよく知っている。
「本気です」
理玖さんの瞳が揺れた。
「……俺は意見を変えるつもりはない。足立社長の話は、もう終わったことだ」
「でも――」
「とにかく茜がとやかく言うことじゃない」
理玖さんが食卓から立ち上がった。
彼の全身から刺すような空気が放たれる。
眉間に刻まれた深い皺が、究極まで機嫌の悪いことを物語っていた。
「シャワー浴びてくる」
理玖さんはそう言って私に背を向けた。