寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
椅子に深く腰を下ろした彼の前に封筒を差し出した。
「……どういうつもりだ」
理玖さんが私を睨み上げる。
でもその目に怯んでいるわけにはいかない。
「退職願です」
「見ればわかる」
昨夜のうちに用意したものだ。
理玖さんから漂う不機嫌なオーラは、今までに感じたことのないものだった。
それを隠すことなく私を見据える。
「こうするのが一番だと思います」
「なにがどう一番だと言うんだ」
「このままだとオリオンコミュニケーションズが――」
私の言葉を遮るかのように理玖さんが突然立ち上がった。
「どういうつもりかわからないが――」
「理玖さんとお別れします」