寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
◇◇◇
彼の部屋にある自分の荷物をまとめるのは、思いのほか短時間でできた。
彼に買ってもらった服や靴などを置いて行くべきか迷ったものの、私がここにいた痕跡は残さないほうがいいだろうと、キャリーバッグに入らない分は全部紙袋に詰め込んだ。
スペアキーと“お世話になりました”と書いたメモをテーブルに置き、エレベーターに乗り込む。
ガラス張りの向こうには、悲しいくらいに綺麗な夜景が広がっていた。
そこにゆっくりと沈むようにエレベーターが下降していく。
「さよなら」
夜景に向かってぽつりと呟き、約二ヶ月半の夢のような生活に別れを告げた。