寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
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ここもバツ。それからこっちもダメだった。
スマホで就職情報サイトをひとつずつチェックしていく。
……全滅だ。
お馴染みのリクルートスーツを着てあれから受けた会社は、どこも不採用だった。
パンプスを脱ぎ、日差しが降り注ぐ午後の公園のベンチに足を投げ出した。
空からは、桜の花びらがはらはらと私のスカートや足に舞い降りる。
うららかという言葉がぴったりの日だ。
私が理玖さんの元を去ってから三週間が経過していた。
たまに寺内さんの運転する車を見かけて、その度に物陰に隠れるという不審極まりないことをしている。
ただ、私が隠れたりしなくとも、向こうはとっくになんとも思っていないだろう。
別れてから一度も理玖さんからの連絡がないことが、なによりの裏づけだ。
沙智さんからも、あれきり連絡はきていない。
私が無責任に仕事を放りだし、割り切れない思いがあるのかもしれない。
オリオンコミュニケーションズの倒産ニュースが私の耳には入っていないということは、足立社長の一件が穏便に済んだことの証だろう。
理玖さんにはこのあと、美咲さんとの結婚が待っているだけ。