寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
私には、どんな未来が待っているんだろう。
そんなことを考えながら空を見上げると、ちょうど鼻先に桜の花びらが止まって、くしゃみが飛び出した。
「今日はもう帰ろう」
ひとり言を呟き、パンプスを履き直す。
そうして歩き出し公園を出たところで、見たことのある車が私の目の前を通り過ぎ、少し走ったところで止まった。
――理玖さんだ。
彼の車だったのだ。
思わず公園の門柱に身をひそめた。
首を伸ばして様子を窺っていると、助手席からすらっとした女性が降り立つ。
美咲さんだった。あの雑誌の記事を穴が開くほど読んだから間違いない。
私の心臓がドクンとひとつ音を立てた。
久しぶりに理玖さんの顔を見て、あぁ私はまだ理玖さんのことが好きなんだと思ってしまう。
そしてその横を歩く美咲さんを見て、あぁやっぱり叶わないと思わずにはいられなかった。
私が呆然と見つめる中、ふたりは喫茶店へと入って行ったのだった。