寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

『会社側は退職届を受理してない』


ますますわからない。

それじゃ私が書いた退職願はいったいどこへいってしまったの?

思いもしないことを琢磨さんに言われて、頭の中がかく乱される。


『兄貴が手元に預かっておきたいって持ったままだ。後任も探さないように言われてる。茜ちゃんは休暇ということにしておけって』

「そんな……。でも無理です。平然とした顔で秘書は続けられません」


お相手の女性だって、私がいつまでも彼のそばにいたら気分を害するだろう。


『茜ちゃん、前に言ってたよね、これまでの人生はアンラッキーを吸い寄せてばかりだったって。それが兄貴と出会って自分に自信も持てるようになったし、やっとハッピースパイラルに乗れたって』


確かにそんなことを言った記憶はあるけれど、それがどうしたというのか。


『それを自ら放棄するのか』

< 279 / 318 >

この作品をシェア

pagetop