寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
『会社側は退職届を受理してない』
ますますわからない。
それじゃ私が書いた退職願はいったいどこへいってしまったの?
思いもしないことを琢磨さんに言われて、頭の中がかく乱される。
『兄貴が手元に預かっておきたいって持ったままだ。後任も探さないように言われてる。茜ちゃんは休暇ということにしておけって』
「そんな……。でも無理です。平然とした顔で秘書は続けられません」
お相手の女性だって、私がいつまでも彼のそばにいたら気分を害するだろう。
『茜ちゃん、前に言ってたよね、これまでの人生はアンラッキーを吸い寄せてばかりだったって。それが兄貴と出会って自分に自信も持てるようになったし、やっとハッピースパイラルに乗れたって』
確かにそんなことを言った記憶はあるけれど、それがどうしたというのか。
『それを自ら放棄するのか』