寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「でも、社長は足立社長の娘さんと結婚するんですよね?」
ふたりが一緒にいるところを目撃したのは、つい先日のこと。
話はとんとん拍子に進んでいるのでは?
『それを阻止しようと兄貴は必死に動いているんだぞ』
理玖さんが動いてるってどういうこと?
とっくに結婚が決まったんじゃなかったの?
いつも軽い調子の琢磨さんの声が急に鋭くなった。
『当事者の茜ちゃんが逃げたままってのはどういうことなんだ』
「逃げたわけじゃ……。私が身を引かないとオリオンコミュニケーションズが」
『悲劇のヒロイン気取りか』
「そんなつもりはありません……! 琢磨さん、あんまりです」
声が震えた。
私が理玖さんのそばにいたのでは、足立社長の手中にはまって会社が倒産に追い込まれてしまう。私はそれを防ぎたいだけなのに。