寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
からかっていただけだとわかっているけれど、理玖さんと私の間にチャチャを入れてきたこれまでのことを考えると、琢磨さんの行動に首を傾げてしまうのだ。
『もしかして茜ちゃん、俺に奪ってほしかったのか?』
「――違います」
即座に否定すると、琢磨さんは『少しは俺の気持ちも汲んでくれ』と電話の向こうで笑う。
『俺たちが腹違いの兄弟だって知ってる?』
「……はい、沙智さんから聞きました」
生後数ヶ月で両親が離婚し母親に引き取られた理玖さんだったが、幼いうちにその母親が他界。
その後父親に引き取られたものの、再婚相手との間にはすでに琢磨さんが生まれていた、と。
『昔から兄貴は、俺や家族に対して一線引いたところがあってさ。まぁそれも、あとから家族になったような形だから仕方ないのかもしれないけど。扱いの難しい兄貴を怖がってか、どうしたって母親は俺のほうを可愛がるし、寂しい思いをしてるっていうのは、なんとなく感じていたんだよね』