寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
『持ってない?』
「一応はありますけど……?」
大学の卒業旅行で一度使ったきりのパスポートなら。
『今から行けるか?』
質問の意図が読めず、「行けるってどこへですか?」と聞き返す。
『ニューヨーク』
「――ニュ、ニューヨーク!?」
『うちの事業所があるところだ。兄貴は今そこにいる』
理玖さんは確か、大学卒業後はそこでずっと働いていたと言っていた。
『すぐに支度して』
「今すぐ向かうんですか!?」
驚いて声が裏返った私に、琢磨さんは『当然』と強い口調で言う。
『寺内さんが外で待ってるはずだから』