寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
邪魔をするわけにはいかないと、私は窓の外の景色を眺めながらシートに体を預けた。
一時間も走ると高層ビルが見え始める。テレビで見たことのある街並みだ。
しばらくして車が止まったのは、空に吸い込まれそうなほど高いビルの前だった。
ニューヨーク事業所がマンハッタンの中心地にあるとは知らなかった。
「ここですか?」
「このビルの三十五階にあります」
池上さんに促されて降り、彼のあとをついていく。
この先に理玖さんがいるのかと思うと緊張してしまう。
エレベーターが上昇するのに合わせて鼓動が速くなる。
「こちらです」
エレベーターを降りて、池上さんが突き当りのガラスの扉を開く。
すると目の前の壁に金色の文字で“ORION Communications”と書かれていた。
そこを右手に見ながら真っ直ぐ突き進んでいくと、今度は左側にガラスで区切られたミーティングルームのような部屋がいくつか見え始める。
――理玖さん?