寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「社長とお話はされましたか?」
「……いえ」
力なく首を横に振ると、池上さんは「そうでしたか」と意外な様子だった。
「社長は出掛けましたので、少しお待ちいただくことになるかと思います」
えっ……出掛けてしまったの?
私が来ていることはわかっているはずなのに。
手放しで歓迎してくれるものだとばかり思っていた自分が恥ずかしい。
理玖さんは、とっくに気持ちに整理をつけているのだ。
「私、帰ります……」
バッグを持ち「いろいろとありがとうございました」と頭を下げると、池上さんに引き留められた。
「副社長からくれぐれもと頼まれておりますので、それは困ります」
「ですが……」
私はここに来るべきではなかった。
自分ひとりで盛り上がっていただけ。