寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

今さら理玖さんの気持ちを振り回したくない。


「社長は少ししたら戻ると思いますので、もう少しお待ちください」


そう言って池内さんは、別の部屋へと私を案内した。

白い壁に黒いデスクやキャビネット。同じく黒い革張りの応接セットのあるスタイリッシュな部屋だった。
解放感のある大きな窓からはマンハッタンの街並みがよく見渡せる。


「ここは……?」

「社長が以前使っていた部屋です。ここに戻ってくることになっておりますので」


池上さんが退室し、ひとり残されてしまった。

理玖さんは何年もここで仕事を……。
デスクのうしろには、額に入れられた表彰状らしきものが何枚か飾られている。
類まれなるコンサルティング能力を振っていたことが窺えた。

ぐるりと部屋の中を見て回ると、あとはもうやることはない。ソファに座って、ひたすら彼を待つ。
ただ、理玖さんが戻ってきたところで、自分から離れておいて今さらなにをしにきたのかと問いただされるだろう。

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