寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
それを考えると、不安で不安でたまらない。
……でも、自分の想いだけはもう一度伝えなければ。
途方もない寂しさと背中合わせで待つこと数時間。
「水城さん、ちょっとよろしいでしょうか」
池上さんが再び私の前に現れた。
時刻は五時半過ぎ。
彼は、私に一緒についてきてほしいと言う。
いったいどこへ連れて行かれるのか知らされないまま、池上さんは私を再び車に乗せた。
「どこへ行くんですか?」
「すぐ近くですので」
私の質問の答えにならないことを池上さんが言う。
「風見が大事な話があるとのことです」
「……大事な話?」
胃の奥がキュッと痛んだ。
もしかしたら、二度と顔を見せるなという話かもしれない。
さっきの理玖さんの様子から考えられるのは、それしかなかった。