寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
そんな話はオフィスを穢すから、わざわざ別の場所に私を呼ぶのだろう。
そうして二十分ほど走ったところで車が止まった。
「ここは?」
「ロックフェラーセンターです。これをお持ちください」
池上さんがチケットのようなものを私に差し出す。見れば、“トップ・オブ・ザ・ロック”と書いてある。
「そこから入りチケットを提示してください。行けばわかります」
池上さんは建物を指差した。
不可解に思いながら助手席のドアを開け、建物の入口を目指した。
チケットを提示すると金髪の若い男性に「グッドラック!」となぜか声援を送られた。
エレベーターに乗らされ、パネルをタッチしたその男性が最後に親指を立てて白い歯を見せる。
愛想笑いになった顔で軽く会釈し、エレベーターの扉が閉まる。
高速で上昇を続け、六十七階を目指す。
もしも理玖さんに別れを告げられるのだとしても、私は私の気持ちをきちんと話そう。